【参加レポ】舞台技術セミナーvol.9 今までの安全、これからの安全

こんにちは。たきこ(@butaon_takiko)です。

2020年1月に、池袋にある東京芸術劇場で開催された舞台技術セミナーに参加しましたので、学んだことを感想をレポートします!

たきこ
セミナー中の写真撮影が不可だったので、文章ばかりですがご了承ください!

舞台技術セミナーvol.9 今までの安全、これからの安全 セミナー概要

 

政令・省令の改正をふまえて、舞台上での高所作業時の安全について学ぶ
2018年6月に高さが2メートル以上の箇所で作業を行う場合で、足場が組めない場所で使用する安全帯についての安全性の向上、適切な使用を促すための政令・省令の改正があり、劇場の作業環境においても、フルハーネス型墜落制止用器具の使用を理解することが不可欠となりました。

今回のセミナーでは、舞台技術者と舞台制作者が政令・省令の改正内容とフルハーネスに関する正しい知識を改めて確認し、ともに考えることで「これから」のより安全な作業を目指していきたいと思います。

舞台技術者が作業を行う時に当たり前に使用している脚立、高所作業台の使用方法、スピーカーやムービングライトなどの吊り込み作業について、「今まで」の作業方法や使用方法を改めて検証し、「これから」より安全に作業を行っていくためにはどの様に作業自体を構成していくべきかを現場の視点から考え、舞台に関わる人々すべてにとって「安全」を考える機会にしていきます。

2020年01月15日 (水)10:00-17:00
シアターウエスト
主催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京芸術劇場

舞台技術セミナーのスケジュール

 

【午前の部】
10:00~12:00
フルハーネスを正しく理解する。より安全な活用方法を考える。
<休憩> 12:00~13:00
【午後の部】
13:00~14:00
「今までの」脚立作業と「これからの」脚立作業。
14:10~15:10
「今までの」高所作業台での作業と「これからの」高所作業台での作業。
15:20~16:20
スピーカー、ムービングライトなどの引き上げ作業の「これから」を考える。
16:20~17:00
質疑応答
プレゼンター:東京芸術劇場 舞台管理チーム

舞台技術セミナーの様子と学んだこと

全体を通して、実演や一般参加者の体験、スライドや映像などを駆使していて、とても意義の高い講座でした。

定員が100人とのことでしたが、実際には100人以上参加者の方はいたと思います。

午前の部:フルハーネスを正しく理解する。より安全な活用方法を考える。

午前中は、主に労働安全衛生法や規則がどのように改正され、現場にどんな影響が出るかのお話でした。

かなり平たく説明してくれてわかりやすかったのですが、それでも講座に2時間を要するので、独学で理解するのは本当に大変だろうなと思います・・・

さらに、参加者の私が一言でまとめると、

  • 2m以上の作業床のない場所では、フルハーネスやヘルメットの着用が義務(罰則あり)
  • 作業の際は、フルハーネスの特別教育を受講した人が当たる必要がある。(現状は罰則規定なし?)

という感じです。

なるべく簡潔にするために、正しい名称を使っていないので、あくまで目安として記事をお読みください。

罰則などについてはとても曖昧で、具体的な対策や数値などはなく、「安全のために必要な対策をとっていなければ罰則ですよ」というような表現です。

ただ、事故が起きたらこと細かく精査されることは間違いありません。

日頃から安全に対する取り組みを最大限に行い続けることが、いざというときにも管理・責任問題を小さくすることが出来るのかなと思いました。

もちろん大前提としては、事故を起こさないことが一番なので、

  • まず知ろうすること
  • 出来ることから一つずつ対策を取ること

これらが必要だと強く感じました。

フルハーネスの仕組みや種類などの紹介もありましたが、私が特に学べてよかったのは、

「フルハーネスを着用して墜落した後」の動きについてでした。

墜落後の実際の動きについて考えたセミナーは、私にとっては初めてでしたし、恥ずかしながら私自身の中でもあまり考えたことがありませんでした。

また、布が破断することで人体への墜落負担を軽減する「アブソーバ」を理解できました。

また、「ワークポジショニング」という言葉とその考え方についても初めて学びました。

平たくいうと、

  1. 両手で作業するために体を保持するために使う→ワークポジショニング
  2. 墜落防止のために体と作業床をつなぐ→墜落防止措置
  3. ワークポジショニングと墜落防止措置は、全く別の役割で兼ねられないので、それぞれ別のロープやベルトが必要になる。

両手で作業ができる環境をつくるのも、安全に作業するための一つの工夫なので、面倒くさがらずに取り組む必要があります。

午後の部:脚立作業、高所作業台の作業、引き上げ作業

午後の部では、東京芸術劇場の舞台部・照明部・音響部、がそれぞれ受け持った講座でした。

まず、舞台部による「脚立の正しい使い方」についてです。

これ、本当に全セクション必要だと思うのです。脚立は誰でも簡単に使えるからこそ、学ぶ機会が少なくて私自身も悩んでいました。

私が脚立の正しい使い方について主に学んだことは、

  1.  脚立をまたいではならないことを知らなかった
  2.  2mを超えると、天板の一段下の踏み桟も使えなくなる
  3.  脚立の種類、安全ブロックの活用

このようなことが新しい学びでした。

続いて、照明部による「高所作業台の作業」についてでした。

私が高所作業台の作業について主に学んだことは、

  1. ジニーは商品名であり、呼び名は様々あるが「電動リフト」が分かりやすそうである
  2.  ローリングタワーは、作業床ではない。→足場の組立等の資格が必要。
  3. スノーケルは、作業床である。→極論、ヘルメットもハーネスも法令的には必要ないが、安全のため着用することは必要。

スノーケルの足を外す場面など、安全に使える状況ばかりでないことも正直に取り上げてくれていたのが好印象で、深い学びにも繋がりました。

最後に、音響部による「吊り上げの作業」についてでした。

私が吊り上げの作業について主に学んだことは、

  1. ロープの選定→伸びにくいセミスタティックロープ
  2. カラビナと滑車が一体化した、「動滑車」の活用
  3. ツールの活用(ストッパー付滑車、ロープ用ハンドル、下降器)

器具を多数紹介していて、女性スタッフが増えている現状を考えると、長く働く上でもなるべく負荷少なく業務に取り組むために、ツールを使うのは大切なことだなと感じました。

おわりに。

参加費1,000円でしたが、料金以上のとても深いセミナーでした。

内容の濃いスライドと解説に加え、実演も数多く行われていたので、準備がとても大変だったのではと想像いたします。

たきこ

東京芸術劇場の皆様、お疲れ様でした・・・!

東京芸術劇場では、不定期ですがフルハーネスの特別講習(正式名称→フルハーネス型安全帯(墜落制止用器具)特別教育)を開催しているとのことです。

ぜひチェックしておきましょう。

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