こんにちは。たきこ(@butaon_takiko)です。
「玉掛け」という言葉をご存じでしょうか?
一般にはクレーン業界など「重い物を吊る」という仕事で必要になる実技技術です。
舞台においても、バトンに重い物を吊る場面はたくさんありますが、安全な掛け方や耐久加重など、重さの安全面について知る機会ってあまりないですよね。
私は実際に玉掛けの講習を受けて、免許も持っています。
舞台業界の人が玉掛けの資格を持っているのも珍しいかと思いますので、今回の記事では玉掛け講習について、シェアします。
玉掛けとは?私がなぜ玉掛け講習を受けたか
「玉掛け」とは、クレーンに荷物をかける技術のことを言います。
舞台業界に身を置く私がなぜ興味を持ったかというと、
吊り物に対する知見を広げたかった
というのが最も大きな理由です。
現場では、ワイヤーで吊るか否か、何点で吊るか、といったことが、先輩の経験則で判断され、現場経験を踏む内に自分自身でも養われていきます。
確かに、現場で動けることが第一ではありますが、判断に迷った場合の、安全で明確な基準を全く知らないのは良くないのではないか?と思っていました。
その中で耳にしていた「玉掛け」の講習時期が丁度良い都合で行けることになったので、参戦してきました!
玉掛け講習の内容と雰囲気
私が参加したのは、コマツ教習所の東京センタです。
JR横浜線八王子みなみ野駅から、徒歩20分くらいしました・・・バスもありますが、時間があまり合いません。アクセスが厳しい・・・
3日間の連続講習です。
- 1日目 8:30-18:15
- 2日目 8:30-17:45 学科テスト
- 3日目 8:30-16:00頃 実技、ワイヤー選定、目測
実技と座学が折り混ざっています。
教習所から借りることもできますが、電卓と皮手が必要です。
とくに借りられる皮手は使い古されているし誰が使ったのかも分からないので、なるべく自分で持参することを勧めます。
男女比は9:1くらいで、参加者22人中女性は2人でした。
年齢は10代の学生と思われる人から、50代までまちまちにいました。
初めはみんな固い雰囲気ですが、丸3日ほぼ同じ時間を過ごすので、最終日には少し打ち解けてきます。
玉掛け講習の免許交付!学んで良かったと思ったこと
実際に玉掛け講習を受けて良かったと思うのは、「安全係数」について学べたことが1番に大きいです。
安全係数とは、ロープの切断荷重と、吊るときにかかる荷重との比を指します。
(安全係数=ロープの切断荷重/そのロープにかかる荷重の最大値)
ワイヤーは6以上、シャックルは5以上の安全係数で考えます。
安全荷重(ton)=破断荷重(kn)÷(9.8×安全係数)
例えば、ステンレスワイヤーで考えてみると・・・
(参考→ステンレスワイヤロープ規格表)安全荷重を6で設定して割ると、
650÷6=約108kg になり、ステンレスワイヤー3mm径(7×7)1本あたりで安全に吊れる重さが、約108kgまでとなります。
6mm径で1.96knが切断荷重とされています。
しかし、金剛打ちではなく3打ちで表記されることも多いので、要確認してみてください。
金剛打ちの場合は、3打ちから強度が約40%低下すると言われています。
(参考→ロープの主要素材 素材別特性)
1kNが大体100kgなので、
(厳密には違うのですが、詳しく知りたい方はこちらなど調べてみてください)
金剛綿ロープ6mm径1本の耐荷重が、
約196kg×40%=約78kg となります。
さらに、安全係数を6で設定して割ると、
78÷6=13kg になり、
金剛綿ロープ6mm径1本あたりで、安全に吊れる重さが約13kgまでという計算が自分で出来るようになります。
(ロープの伸びは考慮していません)
このような耐荷重計算の目安が分かるようになったのは、とても大きな収穫でした。
ワイヤーやシャックルなど、備品の種類やサイズ、点検すべき箇所が分かるようになりました。
おわりに
舞台人にとって、「玉掛け」の知識はどうしても必要なものではありません。
時間も予算もない中では、吊り込み作業においても経験則で判断されることがほとんどだと思います。
ただ、必ずしも経験則で常に判断されることに疑問を感じている方なら、「玉掛け講習」はとても役に立つ講習です。
社会人になってしばらく経った人は、久しぶりに学校に行くみたいで楽しめると思いますよ!
この記事の執筆にて参考にしたサイト一覧です。
- もえろ!タマカケ魂
- ロープの主要素材 素材別特性
- kN(キロニュートン)とkg(キログラム)は換算できるのか?knとkgfの計算問題を解いてみよう 1Nは何kg(キロ)なのか?
- ステンレスワイヤロープ規格表
- TRUSCO ロープ使用荷重・破断強度表
また、2019年9月24日の最初の公開時に誤解を招く表記をしてしまいました。大変申し訳ありませんでした。
よね様@nyoneno始め、ご指摘いただいた方へこの場を借りて御礼申し上げます。
また、この記事を最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
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